古典派オーケストラ 百花繚乱

オーストラリア室内管弦楽団 Australian Chamber Orchestra

 1975年設立。17人の弦楽器奏者が核となりさまざまな編成に伸縮してショスタコーヴィチからバロック音楽までを演奏するオーケストラ。ピリオド楽器を使用して古典派音楽を中心に演奏する団体ではありませんが、2018年には管楽器にヨーロッパからのピリオド楽器のエキスパートを揃え、斬新なベートーヴェンのシンフォニーを披露しました。弦楽器メンバーは楽器こそ現代の楽器から持ち替えはしていないものの、古典派音楽の語法を我が物とし、自在な表現で音楽に息吹を与えることに成功しています。オーストラリア発の生き生きとしたベートーヴェンのライブ動画は私に衝撃をもたらしました(関連動画)。

 古典派の作品をオリジナルの姿で再現、という態度とは一線を画し、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲やヴァイオリンソナタを室内楽版に仕立て直したり、モーツァルトのシンフォニア・コンチェルタンテを六重奏に編曲したり、柔軟に古典派の音楽を現代に息づくものとして料理して、ライブ感たっぷりに演奏。退屈という二文字を退けるその演奏スピリットは古典派の音楽がもつ本来の姿でもあります。

 現代音楽にも熱心に取り組む団体で、これまで委嘱した作品数は120曲以上にもなるとのこと。おもしろいのは、現代音楽のアルバムの中にヴィヴァルディやモーツァルトが挟み込まれていて、またその演奏が鮮烈なことです。現代音楽に対しても古典音楽に対しても変わらぬスタンスで取り組む、という彼らのメッセージに納得させられます。

 古典音楽を演奏する際には必ずピリオドの管楽器奏者を迎えたり楽器を替えたりしなければ、というストイックなところはないようですが、2016年リリースのモーツァルトのシンフォニーのアルバムでもピリオド楽器の管楽器奏者が揃えられ、ユニークな演奏を聴かせてくれています。

 1990年来このオーケストラの芸術監督を務めるヴァイオリニストのリチャード・トニェッティ(Richard Tognetti)は編・作曲も手がけ、古典作品にアレンジを施し、現代に合わせてしつらえることに躊躇がありません。

 このオーケストラに指揮者が迎えられることはなく、トニェッティをはじめとしたメンバーがリーダーを務め、ブラームスのシンフォニーまでも、ただ棒を振るだけの指揮者を排して演奏されます。表情や色付けは指揮者に任せようというオーケストラ奏者にありがちな依存的なところがなく、自発的に一人一人がミュージシャンとなる彼らの態度が、演奏をとりわけ魅力的にしているのでは、と感じさせられます。

 どの時代の作品にも等しく情熱を注ぎ、今生まれたばかりの音楽として蘇らせる彼らの音楽に対する態度は、私たち古典派ファンにとっても大変嬉しいことです。バロックの弦楽作品にもその道の専門家、チェンバリストのエリン・ヘルヤード(Erin Helyard)とともに定期的に取り組んでいます。

 オーストラリア室内管弦楽団は日本との縁も深く度々来日しています。次回はぜひ彼らの演奏を生で聴いてみたいものです。

【オーストラリア室内管弦楽団】

(2020.3.9)

オーストラリア室内管弦楽団の公式サイト

https://www.aco.com.au/

【関連動画】

L.v.ベートーヴェン:シンフォニー第5番 ハ短調 作品67

オーストラリア室内管弦楽団☆